黒川伊保子さん。「角田忠信先生の研究室に出入りしていた頃、『脳はあらかじめ寿命を決めている』としか思えないような所見がある、というお話を伺った。寿命というより、『脳がこの年齢をもって、生き切ったとする』と表現したほうが正しい。実際の寿命と、脳が決めたそれがずれるケースがあるからだ。ヒトの脳は、自分の満年齢の整数倍の周波数の音に反応するのだが、それと同じように、脳が反応する周波数がいくつかある。その中に、寿命を示すと思われるものがあるのである。ヒトは、脳のゴールを知っていて、そのゴールに合わせて、自分の脳や体を、静かに折り畳んでいくように思える、と、先生はおっしゃった。いくつであろうとも、予め決めた終焉で逝く脳は、何らかのこの世の秘密を見て、うまく枯れて、静かに散るのではないだろうか、と」寿命。