動作をゆっくりやる

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北川貴英さん。「動きの速度は落としつつも、ブリージングは通常通り行います。心身の緊張をわずかでも感知したら、すぐに口からフーッと息を吐いて鼻から吸うようにするのです。スポーツの経験があれば、その動作をゆっくりやるのもお薦めです。スポーツ以外でも武道の形やダンス、お茶の作法など、どんな動きでも構いません。それをあえてゆっくりと、たくさんブリージングをしながらやってみるのです。すると、ゆっくり動いているつもりでもうっかりペースを乱してしまう瞬間があるはずです。こうした動きを見つけてはブリージングをし、一定の速度で歩いて行けるようにするのです。そうやって身体のすみずみまで意識を張り巡らせてコントロールしていくことで無意識的な力みを解消し、怒りにくい身体へとつくり替えていくことが可能となります」意識。

ゆっくりと動く

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北川貴英さん。「システマではマーシャルアーツの練習をする際も、ゆっくりと襲ってくるアタッカーをゆっくりと避け、制するようにします。実戦性を追求するなら、思い切り速くやった方が良いような気がするかもしれません。しかしゆっくりの方が練習としてずっと効率が高いのです。なぜならゆっくりと動こうとすると、意識は自ずから身体へと向けられます。それによって無駄な動きの元となる緊張やクセ丹念に洗い出し、取り除いていく事ができるためです。これを実感するには、できる限りゆっくり自転車を漕いでみると良いでしょう。ゆっくりとした動きは勢い任せの動きに比べてずっと難易度が上がります。こうした時、脳波身体からより多くの情報を得ようとします。インプットを活性化させ、より確かな動きを探る為のデータ収集を開始するのです」スロー。

身体を感じることで

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北川貴英さん。「身体を動かす働きには、必ずアウトプットとインプットの二系統があります。アウトプットとは脳から身体へと送られる指令のこと。それに対し、インプットとは身体から脳へと送られる情報を指します。しかし現代人の場合には、脳から身体へ向かうアウトプットに偏りぎみ。インプットといえば目からの情報に限定され、身体からの情報をインプットする働きが極めておろそかになってしまっていると言えます。それが身体の緊張をより自覚しにくくなってしまっている一因となっています。その解決策は、身体を感じること。つまり自分の身体にはどのような緊張が潜んでいるのかを、自覚できるようにしていくのです。身体に意識を向け、よく感じることで、緊張を見つけ出す。そこで助けになるのは、『ゆっくりと動く』ことです」身体からの情報。

息を吐くことで

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北川貴英さん。「ではなぜ呼吸は無意識よりも強く、身体に働きかけることができるのでしょうか?それは呼吸が身体のあらゆる領域と深く関わり合っているためです。中でも代表的なのは自律神経です。自律神経のうち、怒り心頭に発したような時に優位になっているのは、決まって交感神経です。ですから交感神経の興奮を鎮め、副交感神経を優位にしていくことで、気分を安定させていくことができます。それを実現するのが呼吸です。身体は息を吸う時に交感神経寄りとなり、吐く時には逆に副交感神経寄りになるという性質があります。だからこそ息をフーッと吐くことで落ち着きを取り戻すことができるのです。ヨーガや古神道などにも、息を細く長く吐く呼吸法があります。怒らずにストレスを受け流せる人の体は総じて柔らかい傾向にあります」怒り前に息を吐く。

身体へ意識を向ける

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北川貴英さん。「初期消火において重要なのは高性能の消火器や技術ではなく、誰にでも簡単にできる鎮火作業を、なるべく早く行うことなのです。だからこそ、ほんのわずかでも怒りを感じたらすぐにブリージングをするようにします。システマのグリージングが極めてシンプルなのは、こうしたタイミングを重視している為でもあるのです。ここで大切なのは、怒りという感情ではなく、あくまでも自分の身体をリラックスさせようとすることです。なぜなら怒りを収めようとするのも、怒りに駆られてしまうのも、意識が怒りにとらわれてしまっているという点では同じです。あえて身体へと意識を向けるようにするのは、意識を怒りから引き離し、自分を客観視できるようにする為でもあります。これはあらゆる精神的な緊張にも同じように使うことが可能です」身体。

ブリージング

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北川貴英さん。「筋肉の緊張をゆるめるには、無意識を超える影響力によって身体に働きかける必要があります。その為の方法が『呼吸』です。その力を最大限に活用するのがシステマの呼吸法『ブリージング』であり、怒りの炎を消す『初期消火』となるのです。ブリージングとは、システマ独自の呼吸法です。鼻から息を吸って、口からフーッと音を立てながら吐く。効果が足りなければ何度か繰り返します。ポイントは、呼吸のために身体を力ませたり、姿勢を曲げたりしてしまわないこと。ラジオ体操の深呼吸のように身体を丸めたり反らしたりする必要はありません。ただ鼻から吸って、口からフーッと吐く。あまりに簡単すぎてあっけなく思えるかもしれません。しかしそれは、いつでもどこでも誰にでも使えるように、極限まで無駄が削られた結果なのです」呼吸で。

怒る時には筋肉が緊張

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北川貴英さん。「怒りは身体の状態に大きく左右されます。怒る時には必ずそれに見合った筋肉の緊張が見られ、逆に穏やかな気分の時には身体がリラックスしているのです。こうしたことからも、怒りを鎮火するには筋肉のリラックスが大切であることがわかるでしょう。フルマラソンの後と南国のプール。両者に共通しているのも、筋肉がゆるみきっているということ。人は筋肉をゆるませたまま、怒ることができません。その性質を利用して、怒りを鎮火するのです。ですからいくら意志が強くても、筋肉の緊張を放置したまま怒りを鎮めるのは困難と言わざるを得ません。そもそも怒りをコントロールしようとする思いそのものが、怒りの支配下にあるのです。それでは怒りを鎮火するどころか、火に油を注ぐことになってしまっても仕方ありません」リラックス。